文化講演会「雨と日本人」 花宮 廣務 150712 気象予報士 元大分地方気象台長
雨を通して自然の優しさと怖さを知って生活を考え直すヒントになってくれれば嬉しい。気象団に40年勤務して退職後7年。九州各地。
昭和時代には雨が降ると、「いいお湿り」とか「いい潤いで」とか挨拶したものだが、最近は嫌がられることが多く特に若い人には受けない。毛嫌いされている。日本人は雨のお蔭で生活が成り立っているのに。特に若いお母さんは雨と土を嫌う。もっと関心を持ってほしい。
特に土→泥にはひどい言葉が多い。
・泥を塗る・泥仕合・コソ泥・泥を吐かせる・泥縄・泥酔・泥くさい 泥をいい意味で使うことはない
戦後日本を発展させたのは雨の力、雪の力である。特にエネルギ-の電力は水力発電→水主火従
雨は日本人の生活・文化を育ててくれた。豊葦原瑞穂国→豊かな葦の生えるみずみずしい稲の国と言われてきた。イネを育てるのは水。
(日本は雨の多い国)
・世界一大きい太平洋と、ユ-ラシア大陸に挟まれ世界一高いヒマラヤ山脈の影響を受けている。南の暖かい空気と、北の勘気は
チベット高原に阻まれて偏西風に乗って日本に来る。是が多雨の原因である。
・南太平洋で発生する台風は、北上し日本に26個/年来る。梅雨は南の暖気と北の勘気のぶっつかり合いの結果である。
この台風と梅雨からの雨で日本は成り立っている。梅雨は「空の水道」、台風は「空の給水車」と呼ばれる。台風は水をもたらすだけでなく、海の大掃除も行っている。海底から引っ掻き回し、新陳代謝を促進する。台風→掃除屋
(降水量)
・1644mm/年 大分市、 1700mm 日本平均、 800mm 世界平均 、テヘラン 200mm
・雨の 35% 蒸発
45% 川を通じて直接海へ
20% 人間が使う分
・日本の降水量は世界的に見れば多いが、狭い島国/人口が多いので、一人当たりにすると世界平均の1/3としかならない。
・年々保水能力は減少の一途 山林の減少・道路の舗装
・水の使用量
一日当たり使用量 170L(1965年)→296L(2000年) どんどん増加している。
(雨と人間の生活の仕方・性格)
雨は人間の生活、文化を作りそこに住む人の性格まで作ると言われる。雨=天候と言ってもいい。
欧州 牧畜なので牧草の種をまき、放牧すればよい。自由な時間、自由な精神。
砂漠地帯 水争いが常態化し戦いの連続。闘争心が強い。協調性がない。
アジアモンス-ン地帯 自然に従順 忍耐心 自然災害と共存
「身土不二」→身と土地は一体、土地の旬のものを食べるのが健康に良いのだ。
当初は仏教用語で「身がよりどころにしている場所とは切り離せない」という意味である。後、(しんどふじ)食養運動のスローガン。
「地元の旬の食品や伝統食が身体に良い」という意味となる。
・昔の人は四里四方、歩ける範囲で食物を求めて生きていた。講師は「ばっかり食」→ ばかり食うこと。
春・・・筍とフキ 夏・・・ナスとキュウリ 秋・・・芋、カボチャ 旬のものばかり
昔のことわざ「師走 筍 春 なすび」→無理な望みを言い表したが、今は何でもいつでもある。
昔の人は粗食であったが旬のものを食べていたので健康で長命、今の若い人は不健康でおそらく短命となるだろう。
(雨と言う言葉)
英語ではRainだけだが、日本語では数限りなくある。 小雨、微雨、小糠雨
・雨、雪にまつわる言葉
春 木の芽起こし、菜種梅雨、
秋 時雨、
冬 粉雪、ぼた雪、淡雪、氷雨、
・嫁泣かせの雨 夜の間降っていて、朝止む雨(農作業ないと期待したのに)
・親方泣かせの雨 夜の間晴れていて、あさ~降る雨
・遣らずの雨 人を帰さない為であるかのように降る雨
・催涙雨 7月7日に降る雨、織姫が雨で逢えない為に泣く涙。
(雨冠の漢字)
・雪 ヨは当初箒の意 掃ける雨の意
・雹 次々に氷に包まれて大きくなるので 直径5mm以上が雹、それ以下が霰
今までで最大の雹は、29.6cm
・零 この意味は分からない。何で令なのか。
(色の付いた雨)
・緑雨 新緑の頃に降る雨
・紅雨 春、花に注ぐ雨。赤い花の散る様を言う。
・黒雨 空を暗くするような雨 梅雨時の真っ黒な雲から降る雨
・白雨 夕立
(空気にも定員がある)
温度によって水蒸気の定員の数が決まる。温度が低くなるほど、水蒸気を含める量が少なくなる。
20℃ 17g/m3
11℃ 10g/m3
5℃ 6g/m3
定員オーバ-した水蒸気は雨となって降る
(地球温暖化による気候変動)
・利便性を求め、飽食の生活が温暖化→気候変動をもたらしている。集中豪雨・ゲリラ豪雨・夜中の豪雨。
・温暖化によって温度が上昇し、大気中の水蒸気の量が増加し、これが降ると豪雨となってしまう。
・50mm/H以上の豪雨が降る回数が30年前の1.4倍になっている。
(日本の川の特徴)
明治期のいわゆるお雇い外国人の一人、オランダ人「レ-ケ」(土木技師)は日本の川を見て「これは川ではない。滝である」といった。
これは山から急斜面を水が駆け下っていることを言ったもの。平野部が短く、海に注ぎこむのだ。
明治以前の治水は、自然と調和させて曲がる川は曲がらせていたが、明治以降なるべくまっすぐに海に流すようになった。これが、
災害を大きくしていることは否めない。このことの反省はやっと始まった所。
・最近の大災害 和歌山 熊野川 1600mm/3日間 豪雨で山が崩壊した
(地球は水の惑星) 宇宙飛行士ガガ-リン「地球は青かった」
地球表面積の70%は海面である。又地球の水の97%は海水である。しかも残る3%真水のほとんどは南極・北極の氷。
使える水はわずか0.8%しかない。とても無駄遣いできる状況ではない。
(パン食より米食へ)
以上より、日本人は土地に適した生活をし、土地にあった食物を食べるべし。小麦1kg作るのに4トンの水がいるという。これで作る
パンを止めて、日本で自給できる米を食べるべし。これこそ身土不二である。外国より高い小麦を買って、自国の米を縮小させることはない。
・げんきの字は昔は「元氣」・・・こめであるが、今は「元気」・・・乄である。これでは元氣になれない。
・田は光合成で酸素を出し、水を浄化している。又降った雨を貯めて洪水調節を行う。
その効果は8兆円とも言われる。
最後に雨による四季の花々の変化について話す。花は季節ごとに花の色を変えながら咲いて行く。これは大きく雨によるもので、雨は花の色まで変えているのだ。春から順に「白い花→黄色の花→ピンク→紫」と変わり、安芸にはこの逆に「紫→ピンク→黄色」となる。
相田 みつお 雨の日には 雨の中を 風の日には 風の中を
この詩のように季節天候に合わせて雨を楽しもう。
「感想」
・まさに気象台で一生を過ごした人の経験談。其れだけで十分面白い、その中で米食礼賛は少し過ぎるが正論で支持する。
・但し最後の「相田みつお」はいただけない。読んでもいないのに言うのもなんだけど、この人は嫌いだしどこか胡散臭いやつ。
何か人に阿るというか、妙に卑屈な感がするのは思い過ごし?