191108⑥「エルニ-ニョ現象(2)~ヒトラ-のモスクワ侵攻と世界食糧危機~」
前回はエルニ-ニョについて科学的説明を行った。人類の進化に大きな影響を与えたのである。
今回は海面水温変動が、歴史に大きく影響したことを話す。
「ピサロのインカ帝国征服」
幸運にもエルニ-ニョが発生し、ベル-海流が弱いのに助けられてインカに到達できた。
スペイン人。スペイン王からベル-支配の許可を貰い、出発。しかし南極からのベル-海流に阻まれ到着に苦労する。ベル-海流が弱まりエルニ-ニョが起きた三回目にやっと到達したといわれる。
→通常の年では、当時の航海術では到着できず、インカ帝国征服は起きなかった。
「インドマドラス地方中心の飢饉」エルニ-ニョによる少雨。
モンス-ンが弱くなって、水不足で食糧危機。一千万人の死者。
通常の年では多雨であるが、エルニ-ニョが発生すると、インドは積乱雲が発生せず、日照りとなる。→水不足。
「ヒトラ-のモスクワ侵攻」 エルニ-ニョの年で、厳冬。
1941年ヒトラ-はロシア侵攻開始。年末にはモスクワまで迫るが、降雪と泥濘に阻まれる。独軍の
気象専門家は、この年は暖冬と予想していた。過去3年間低温傾向が続いたが、3年以上続くことはないとした。しかしこの年はエルニ-ニョ現象であった。エルニ-ニョは北部ヨ-ロッパにも影響し、
特に東部戦線では厳冬となった。
「世界食糧危機」
1972年~1973年は、エルニ-ニョが20世紀最大となり、世界各地で異常気象。旱魃、低温、多雨。
農業国の北米、ロシアでも食糧不足で、価格高騰。
・この事からエルニ-ニョの研究が大幅に進展した。
太平洋東部の観測強化。予測モデルの作成。世界各地の観測網の充実。海上ブイの大量設置。
・各国で食糧自給率、食糧安全保障への関心が高まる。
「コメント」
ナポレオンもヒトラ-も冬にやられたのだ、というよりエルニ-ニョにやられたのだ。
天候が歴史の大きな変動に関わっていることを認識。日本陸軍もインパ-ルでは雨期に負けた。
しかし農業は異常気象を予測されたら、どう対処するのか。気象学者の仕事ではないというのだろうな。