191018③「アイルランドの飢饉をもたらした天候不順」
今回は長雨と冷害などの気候不順がテ-マである。農業においては、日照不足や低温による発育障害や病虫害の発生がある。こうした現象は気候不順という言い方が相応しいが、気象庁の言葉としてはあいまいな表現として使わない。
「長雨の事例」
1315~1317年、ヨーロッパの大飢饉というのが知られている。東アジア(中国・日本)にも飢饉の記録がある。世界的に食糧不足が起こり、人口減少となる。
これらの原因は次の通りとされる。
・ニュージ-ランド北島の火山噴火 ロトルア湖 タラウェア山
・太陽活動の低下 太陽の極小期
・北半球の平均気温低下
「食糧不足で世界的に人口減少」
・ヨーロッパの人口推移 1300年 7800万人、1400年 6000万人、
この時代は中世の暗黒時代といわれる。→ペストの大流行。騒乱の頻発。
・中国 1200年 1,15億人、1300年 8600万人、1400年 8100万人
・日本 1200年 600万人、1200年 700万人、1400年 700万人
「アイルランドのジャガイモ飢饉」
1845~1849年にかけて、アイルランドで主食のジャガイモ大不作が発生した。これは天候異変に
よってジャガイモの病害が、大規模に発生。そしてこれはヨ-ロッパ全域に広まる。アダム・スミスは国富論で、「ジャガイモはより多くの労働者を養う」と言っていたほど主食であった。
アイルランド人口 1754年 320万人→1845年 820万人 ジャガイモにより人口増加。
ジャガイモはナス科の多年草、原産地はアンデス高地。16世紀にスペイン人がヨ-ロッパに移入。
アンデスは寒冷・湿潤で、ヨーロッパの気候に合致していたので、ジャガイモ生育に適していた。
生産量は小麦の2倍。
その病害原因は以下の通り。
・病害の発生は、アンデスの土壌に由来する。
・植え付けは種子よりなされるので、単一種となりいわばクロ-ンである。この為病害に脆弱。
一旦発生すると、全域に蔓延する。アンデスの人々はこのことを知っており、交配して病害に耐性の
ある種を作っていた。ヨーロッパでは、このことを行わなかったので、発生すると大流行した。
・1842年に移民先の北アメリカ、カナダで病害が発生し、すぐヨ-ロッパに伝染した
・この年のアイルランドの気候は、日照が少なく、高湿度、多雨で、病害は広がりジャガイモに
大被害。
・アイルランド農業はジャガイモ生産に特化していて、農業生産激減。
飢饉により100万人が餓死し、総人口の1/4 200万人が北米に移民した。その後も移民は続く。
「コメント」
単一農業、気候変動が、これほどの被害を起こすとは。この苛烈な運命が、アイルランド人の生き方を変えてしまったのであろう。