191004①「古気象学により明らかになった過去の記憶」
この講座は気象・災害と歴史の関係、また過去の気象をどう調べるのかという科学的手法について話す。今までの歴史学の世界では、歴史を環境・機構に結び付ける発想はなかった。
近年自然災害が増加しているが、地球温暖化をすべての原因のように説明されることもあるが、一因ではあるが全てではない。
・平成27年の関東東北豪雨
台風17・18号が原因であるが、関東北部に線状降水帯が発生し豪雨となった。発生のメカニズムは
はっきりしないが、利根川・鬼怒川というのは過去から大きな被害を受けてきている。北関東の河川
の氾濫は、奈良時代から問題となってきた。北関東の地形の影響も無視できない。
「歴史と気象・災害との関係」
歴史に関する自然環境・気象の影響に関心がもたれたのは、ここ20~30年の事である。それまで、
歴史は人間中心に考えるものとされ、気象の事を云うと環境決定論者として非難されてきた。
(これが変わってきたきっかけ)
・1970年以降の公害問題
・1980年代の大気汚染、フロンガスによるオゾン層破壊
・1980年代 地球温暖化
・過去の気象を調べる科学的研究の大きな進展
(これまでの過去の気象を調べる方法)
・地層の花粉を調べ、花粉の量が多ければ温暖、少なければ寒期
・樹木の年輪の幅 広い→温暖 狭い→低温
・アルプスの氷河の溶け具合
(研究手法の革新) 元素同位体の利用→古気象の調査・汚染しベルの調査
同位体 同一原子番号を持つものの中性子数が異なる核種をいう。この場合同位元素という。
同位体においては、化学的性質は同等である。しかし質量数が違うために、結合解離反応などに
差が現れる。特に質量が2倍、3倍となる水素同位体では軽水と重水のように顕著な物性の差が
出る。
地球の気候変動にともなう炭素同位体の変化は植物のみならず、食物連鎖の中で生産者から消費者へと渡り体内に、記録される。そして生物が化石になると、その中の同位体はその時の状況を今に伝えることになる。
各種同位体の分析で、当時の気候が判ることになる。水素・炭素・窒素が代表例である。
又炭素14(中性子14の炭素)の利用によって、大気汚染の状況や程度を知ることが出来る。
・よく使われる資料 鍾乳石・万年氷・有孔虫・
・南極観測隊は100万年前の氷を発掘中 氷の含有成分・氷に含まれる空気成分の分析
・同位元素が研究に使われ始めた1970年代以降、気象化学にとってとても面白い時代になった。地質学に大陸移動説が生まれた196年代の様である。
(歴史の変動を気候に求める環境決定論者は間違いと、歴史学者からかねてより非難されてきたが、気象変化は食糧事情に直結するのであり、経済活動、政治活動に大きな影響を与えることが確信
された。)
「コメント」
気象から歴史を研究してきた人達は、もう一つ立場が認められていなかったか。最近の分析方法の進化で、逆に古気象学の存在が大きくなってきたのだ。肩を張っているように聞こえる。でも良いこと。今後の具体的歴史との関係の話は、とても興味深い。