180525⑧「軍事に応用されるAI」

「兵器にAIが搭載されると、兵器は自立性を帯びる」

AIが軍事に利用されると、兵器がある種の自立性を帯びてくるということが起きる。兵器が自分で

判断して動くことになる。これまで兵器は道具であって、これを使って兵士が戦場で戦っていた。AIが兵器に搭載されると兵器が自分で戦うという可能性が増大する。一つの例はイラク戦争なので使われた「巡航ミサイル」、これは数百kmの射程で発射される。

遠距離からの発射なので、目標をピンポイントとすることが困難なので、目的地周辺に到達すると

目を開く。→自分のセンサ-を使って地形をバタ-ン認識し、事前に入力された目標をキャッチし

攻撃する。

「兵器にAIを搭載する考え方」

これは米国防省の軍事政策の影響が大きい。The herd ffset(第三次軍事刷新)。

第一次  20世紀前半からの核兵器開発  マッハンタン計画(日本への原爆投下)

              →圧倒的軍事大国化

第二次  20世紀後半の精密誘導兵器(ミサイル)

第三次  ロボット工学を軍事力の要にして、自律的兵器の製造

・第三次軍事刷新の進捗状況

 基本的にはまだ研究開発段階。EX、無人ステルス戦闘機→AIが自分で敵を見つけて、戦闘を

  行う。 この戦闘を「ケンタウロス戦」という。人間と機械(ロボット)との合体したものが戦うのである。

 ケンタウロス→ギリシア神話で、上半身は人間、下半身は馬の怪物。ラピテス族との戦いは、

   オリンピアのゼウス神殿の彫刻で知られる。

・ロボット兵器に搭載されたAIの長所は何度も話したように人間より優れた「バタ-ン認識」である。

 瞬時に敵・情況を判別してしまうのである。

・しかし戦場のように、不確実性(何が起きるか分からない状況)では、臨機応変に行動する柔軟な

  対応力が求められる。これは今の所人間が優れている。

・現在では、戦場にいる人間がバタ-ン認識に優れたAIを駆使して戦果を最大化するのである。

 例えば、ドロ-ンから得た情報で戦場の敵の情況を瞬時に解析し、人間が対応するのである。

「完全自立兵器と半自立兵器」 完全自立兵器への懸念

現在、国防省はこの二者を完全の区別している。そして半自立兵器を目指している。というのは、

完全自立兵器への懸念である。本当は完全自立兵器が望ましいのだが、その為には事前にAIに

事細かな行動ル-ルを教え込まねばならない。戦場における事を全てプログラム化することは不可能。よってロボットが自分に搭載されたセンサ-が取得した外界情報(Big Data)を機械学習で消化することで、自ら学ぶアプロ-チの方が適している。その結果、Deep Learning=深層学習)で、臨機応変に自律的に活動できるようになる。ロボット兵器の進歩の未来である。

これは人間の予想や判断を越えたものになってしまう恐れがある。SFや映画(ターミネ-タ-)の世界になってしまう。

国連では危機感が高まり、ロボット兵器規制の話しも出るが、合意にはなっていない。

「AI搭載ロボット兵器の拡散の恐れ」

・小国・発展途上国への拡散

従来、ハイテク兵器は大国にしか作れなかった。しかし電子部品や機器は民生用に大量に安価に

製造できるようになって、小国や開発途上国でもこれらを入手してAI搭載のロボット製造も可能に

なりつつある。核拡散と同じく、AI兵器の拡散である。

・AI技術における民間企業の進化

今迄は軍事技術が先行していたが、今やAI利用やDeeo Learningでは、グ-グル・マイクロソフト・

アマゾン等がリ-ドしている。そしてこの技術は広範囲に容易に入手できる。この為、国防省は

これ等民間企業にすり寄っているとさえ言われる。

Dual Use

技術を民需と軍需に利用することを、Dual Useという。この事は、日本でも、話題になっている。

防衛省と大学・研究機関間の共同研究である。民需と軍需の境目がなくなったので、日本の

科学者達はこの問題に神経を尖らせている。

Dual Useの是非」

・軍事技術の民間転用

過去の歴史を振り返ると、軍用と民間の技術は相俟って進化してきている。例えば米国防省は、

第二次軍事刷新で巨額予算を使い、様々な開発・研究を行った。これが民需に応用された。

   半導体・ジェットエンジン・コンピュ-タ-

・開発・研究のスタートは軍事研究である。 EX、自動運転車

 今話題の自動運転も、2004年の米国防省の自動運転車のレ-スから始まった。230kmの

   コースを作って、各界から自動運転車を参加させた。これは軍事的目的から始まった。優勝した

 スタンフォ-ド大学のチ-ムを、グ-グルが引き抜いて研究開始した。ここから世界的ブ-ムと

 なる。

結果的には、不確実性のある戦場での使用は困難で、民間に応用されていったのである。

社会の利便性を高め、新しい産業を振興したのである。

故に、軍事目的なので断じて参加すべきではないという頑な考えは正しくない。むしろグ-グルなど

の巧みな戦略が目立つ。採算性の低い基礎研究は国防省にやらせて、可能性があり収益性の高い

分野への特化である。例えば、軍事監視衛星(スパイ衛星)のBig Dataの利用である。

「今後の懸念」

否応なしに、反完全自立兵器から人間が関わらない完全自立兵器の方向は間違いないであろう。

各国の軍事関係者、政治家の持つ「他国との差別化」「安全保障」との優先課題がある中で

究極の判断をAIに任せてしまうことなのである。このことは、一般市民はもとより、科学者も真剣に

考えねばならない。

 

「コメント」

今話題のテ-マ。全くザッとした話ではあったが、私の理解には助けとなった。

しかし、歴史・問題点の指摘まではいいが、それについての方向性・答えは全く歯切れが悪い。

それを生業としている人としての限界ではあろうが。むしろ、不完全な人間よりは完全な答えを出してくるのが究極のAIではなかろうか。その様なAIを作るDeep Learningであって欲しい。理解していないので、こんなことを言っているのかなとの思いをしながら。

今回の講師の滑舌の悪さには閉口した。リスニングに通常の倍の時間がかかる。NHKも聞いているのが年寄りなことへの配慮が欲しい。