170721③「天気予報から温暖化予測まで」
雲などの移り変わりから天気を予測する「観天望気」は、昔から知られた人間の智慧である。現在の天気予報は数値予想モデルの進歩とス-パ-・コンピュ-タ-の技術革新で、予想の誤差は小さくなってきている。
「観天望気」広辞苑
空の情況を観察して、天気を予測すること。雲形、動き・風・太陽や月の見え方などから経験的に
予想する。
(天気の言い伝え) この様な「俚諺」にはそれなりの理由がある。
・朝焼けは雨 ・猫が顔を洗うと雨 ・朝雨は女の腕まくり (注)本当は怖いのになあ
・蟻の行列は雨 ・夕焼けは晴れ ・朝のぴっかり姑の笑い→信用できない
・朝霧は日中の晴れ ・伯母の牡丹餅と乾夕立の来ぬことはない→伯母は、甥・姪に優しい。
・うろこ雲は雨 ・山に笠雲かかれば雨 ・月夜の大霜
・鐘の音が良く聞こえると雨
「地方特有の風」
日本各地にはその地方特有の名前を持った風がある。局地風・地方風と言う。特定の方角から
吹いてくる風に対して名づけることが多い。
・山から吹き降りる風 六甲颪、伊吹颪、赤城颪、比良颪
・空っ風 冬に関東平野に吹く乾燥した北風
・やまじ風 四国の法皇山脈を吹き降りる南寄りの風
・まつぼり風 阿蘇山外輪山で南寄りの風
・やませ(山背) 夏に東北地方の太平洋側に吹く寒冷な風。冷害の原因
「気候と気象の違い」
(気候)
各地における長期にわたる気象(気温・降雨など)の平均状態。ふつう30年間の平均値を気候値とする。
(気象)
大気の状態及び雨・風・雷など大気の諸現象。例 NHKの気象通報
(天気)
任意の場所の任意の時刻の気象状態。空模様。
(天候)
ある地域の数日間以上の天気の状態。天気と気候の中間概念。
「気象現象の単位」
気象現象には、様々な空間のスケ-ルと時間のスケ-ルがある。
・空間 m単位から地球規模まで
・時間 秒から数カ月・年まで
私達に馴染の深い温帯低気圧・高気圧・台風・前線などは千km単位。時間単位は数日から
一週間まで。
・集中豪雨 時間は数時間から数日 空間距離は数10kmから数100km
・台風 数千km 数時間から数日間
「天気予報」
(デ-タの収集)
以上の概念を理解した上で、天気予報に付いて説明する。
・天気図作成の歴史
天気予報ではまず天気図作成から始まる。天気図を予測に使うには、各地の現在のデ-タを蓄積
することが求められる。世界各地で同時刻に気象観測を行いデータ共有できるようになるには
通信技術の発展が不可欠であった。
・東京気象台
明治8年(1875年)6月1日に気象観測開始し、天気図作成→6月1日は気象の日となる
・天気予報開始
明治17年(1884年)
・世界の気象情報
現在は9時21時に世界数千ヶ所の気象観測地点で気象データを観測し、気象衛星情報を加えて
天気図を作成。
これを元にして気象解析・予報を行っている。天気図には地上天気図と高層天気図(5000m)が
ある。
・気象観測
従来は、南方定点観測船・富士山測候所など有人観測を行っていたが、現在は気象衛星である。
気象衛星「ひまわり」 1978年に1号が運用開始。現在は8号。範囲 インド洋からハワイまでの
太平洋、豪州まで。
(予報)
現在の天気予報は、数値予報と言う技術を使っている。
・数値予報→大型コンピュ-タシステムを使い、気象観測値を基にして物理学の数値計算を繰り
返し、将来の大気の状態を推定する方法。大気の運動・気温の変化・水蒸気量の変化などを支配
する複雑な連立方程式を解いて予想天気図を作る。
・気象庁では1959年から数値予報が始まった。当時は予報官の参考資料程度の精度であった。
現在の気象庁のコンピュータは当初の千億倍の演算速度、数値モデルと進歩と相俟って予報精度
は格段に向上した。
・1980年の1ヵ月の予報精度が、現在の3日予報の精度とおなじレベル。それ程向上している。
・現在は台風・集中豪雨の予測は可能、極地的ゲリラ豪雨は予測困難。これはモニタリング強化で
対応するしかない。
・季節予報 天気予報より時間スケ-ルの大きいものとして、季節予報がある。天気予報は
「日単位」であるが、季節予報は1ヶ月を平均した月単位となる。そして天気予報の様に都道府県別
とはならず、地方ごととなる。(東海地方、甲信越地方・・・・)
この季節予報の根拠は、海水温の変化である。大気は局地的に短時間に変化するが、海水温の
変化は緩やかで、長期間となるので。→エルニ-ニョ・ラニーニャ。インド洋の海水温・・・、極地の
気候。
「地球温暖化」 広辞苑
化石燃料の消費で生ずる二酸化炭素などの温室効果によって地球全体の平均気温が上昇する
現象。気候変動や、極地の氷の溶出による海水面上昇などを引き起こす。
気候変動の時間スケ-ルの長いのが、地球温暖化予測。
季節予報が日本の地方ごとに出されるように、地球温暖化予測は地球のある纏まった区域ごとに
行う。CO2濃度など予測困難なので、あるシナリオの中で見通しを出している。
過去100年で世界0.7度、日本1度。2100年には1.8度~4度上昇とも言われ環境への影響が懸念されている。
「コメント」
学問と言うのは、ものを観察してそれぞれの結びつきを見極めること。そしてそのそれぞれの関係を一つの法則として仮説を作る。そして又その仮説を繰り返し確認していくことに尽きる。こういう
ことかな。
そうすると観察とその仮説(シナリオ)が肝心。頭の悪い、ひらめきのない私ごときには出来ない
ことなのだ。コンピュータは、そのお手伝い。天気予報の元はやはり観天望気なのだ。