1700609⑩「ミクロの領域に挑むには」
「講師概説」
「もの」が原子から出来ていることが明らかになると、次に原子が本当にものの究極の構成要素なのかという課題に科学者たちは取り組んだ。1904年にトムソンが原子モデルを提案、その後
ラザフォ-ドは水素の原子核を「陽子」と呼び、チャドウィックは放射線から「中性子」を実証した。
こうして20世紀のはじめにかけて、原子の構造や放射線の研究が進み、極小領域の理解に必要な量子論が確立されていく。
「原子の本質」 量子論を使って
今日は原子の本質は何であるかについて話す。原子の中身というような極めて小さい領域の話しの事を量子論と言う学問を使って説明していくが、その基礎となる原子構造を説明する。
19世紀までは「もの」は原子から出来ている、原子が組み合わされて分子なっていくと分かってきた。原子が本当に「もの」の基礎単位なのかという事が研究対象になっていく。原子の中はどうなっているのか。
「原子の研究の歴史」
・トムソンの原子モデル ぶどうパンモデル
原子の構造には原子より小さいものがあるとした。後にこれがマイナスの電荷を持った電子である
ことが分かった。そしてこのマイナスを相殺するプラスの電荷は何処にあるのかが問題となる。日本ではこのモデルをぶどうパンモデルと言う。
・長岡半太郎
物理学者。土星型の原子モデルを発表。中心部に電荷を持った原子核、その周りを電子が土星の
輪のように廻っているとした。
・ラザフォ-ド トムソンと長岡モデルで説明できない所を改良したが、まだ不完全。
放射能及び原子核を実験的に研究。α線(Heの原子核)による窒素原子核の破壊に成功。原子核物理学の父と言われる。プラスの電荷をもつ原子核とマイナスの電荷を持つ電子が何故くっつかないかの疑問は残った。
・ニールス・ボア デンマ-ク ノ-ベル賞 疑問を解決した。量子論の育ての親と言われる。
原子爆弾に反対した。アインシュタインと共に、量子力学の双璧と言われる。
一つの原子の中で電子がどんな風に配置されるかを研究した。原子は原子核と電子で出来ている。原子核は陽子と中性子よりなる。その中で中性子は電気的に+でも-でもなくて、電子がその周囲を
飛び回っているとしたのがラザフォ-ドであったが、二-ルス・ボアはこれを進化させた。
しかし問題も残った。原子核はプラスの陽子が集まって出来ているが、どういう力でプラス同士が
くっついているかの仕組みを説明できなかった。
「プラスの陽子の成り立ちの解明」
自然界には4種類の力がある。 ・強い力 ・弱い力 ・重力 ・電磁気力
我々が体験しているのは後の二つ。
・強い力
原子核の中心部にプラスの陽子を集めるのは強い力である。重力を1とすると10の38乗でとてつもない力であるが、我々は感じる事はない。何故かというと、ごく短い距離しか働かないからである。
・弱い力
放射性崩壊に関する力。放射性崩壊とは放射能を出しながら元素の種類が変化していく反応の事。
この時に関係するのが弱い力である。
陽子とは原子核を構成する粒子の内、正の電荷を持つ粒子である。プロトンと呼ばれる。陽子は長い時間を掛けて崩壊する。「カミオカンデ」の目的の一つは、陽子の崩壊を観測することであった。ニュートリノ。
「まとめ」
今迄の研究で原子の事は分かった。次はその中身となる。原子の種類が異なっていくのは、原子核の中の陽子の数である。Hは一個、Cは六個・・・・・。90の天然元素と多数の人工元素がある。
「コメント」
「もの」の根源の研究には長い歴史があり、今も続いている。理論も大事であるが、実証実験が
不可欠なことが分かった。経緯を理解するのも容易ではないが、最先端はどれほど大変か。理論構築には、論理がまずあるべきなのだろうが、どこかひらめきみたいなものが、必要な事が話の中から感じられた。