歴史再発見 漢字と日本語の文化史
早稲田大学社会科学総合学術院教授 笹原 宏之
⑩ 130903 地名に出てくる漢字 (今日の漢字) 谷・
日本列島は狭いようで広い。広さは世界で62番目だが、南北で3千km、国土面積は37万平方km。
山有り谷有り川有り、また海岸ありでそれぞれの土地を表す固有名詞が出来た。それを古代から帳簿に記す必要からこれに字を当てるようになった。最初はカタカナ・平仮名てあったが、昔の人は漢字の方が正確に表現できるし,格が上と思うので漢字で表記するようになった。47都道府県で市町村は1719、その地名として延数千万件がある。かっては小さな田んぼ一枚一枚に地名を持っていたが今は使われず、固定資産管理上必要として役所でのみ土地台帳に字として載っている。(通称として使われる場合もある)
このような細々としたものを入れると1億件といわれる地名がある。
「面白い地名」
・北海道 アイヌ語に漢字を当てた地名がある。
・沖縄 独特の読み方 豊見城(トミグスク)
・山形 大宝寺字日本国
・福島 東白河郡鮫川村赤坂中野字新宿
・神奈川 神奈川県横浜市神奈川区神奈川
・静岡 地名(ぢな)
・京都 京都府京都市東山区三条通り南裏二筋目白川筋西入る二丁目南側南木本町 長い地名
・兵庫県 南淡路市市市(いちいち)
・徳島県 阿南市十八女町(さかりまち)
・鹿児島 鹿児島県志布志市志布志町志布志
・岐阜県 美濃市 地番が続く
・千葉県 津田沼には意味がなく、合併した場所の頭文字をつなぎ合わせている。
「地名の漢字」
・3000種の感じが使われている。多い順 県 字 町 市 郡 大 田 島 山 川 北 沢 谷
・町の読み方 まち(東日本に多い) ちょう(西日本に多い)
・栃 橡が本来だが栃が江戸時代から使われる。」これは国字である。2010年から常用漢字。
・潟 書きにくいので江戸時代から略字(泻) さんずいに写
・谷 関東ではヤ 渋谷・四谷・谷戸・谷津・ 関西ではタニ 谷町
しかし江戸時代以降、文化の進展とともに関東風の読み方が西に広がっている。また明治維新以降、関西風の読み方が東京にも見られる。 鶯谷・茗荷谷
「中国語と日本語の違い」
中国語では字を正しく書けば発音はどうでも良い。各地の方言に委せることになる。表音文字ならではである。
中国では漢字を表音文字として使う。その例
谷 コクと読むので穀物→谷物と書いて米・麦等の穀物を表す。いわゆる当て字を平気で使う。本当?
更に同じ発音で有れば一つの感じで書いてしまうという漢字の運用が進んでいる。
日本では、谷。 表意文字なので、タニ・ヤ・ヤチ・ヤツ・ハザマ・サコ・サク等同義語、同意語の意味を尊重していろいろに読まれる。
「方言文字・地域文字」 地域独自の文字 現在では使われなくなった。
峠 垰(中國地方にある小さな峠) 峠は国字で語源は手向け(たむけ)
崖 垳 厂 崕 欠 本来の意味は欠けた土地の意