歴史再発見 漢字と日本語の文化史
早稲田大学社会科学総合学術院教授 笹原 宏之
⑬ 130924 若者漢字と未来 (今日の漢字) ・桜・櫻
ここまで漢字の過去と現在について色々な角度から眺めてきた。漢字は動きを止めることなく、日本人と共に歴史を歩んできた。
・漢字は、表音文字である仮名やロ-マ字に取って代わられて、日本から消えてしまうという予測が明治時代からなされてきた。コンピュ-タ-の出現は、それを加速すると言われてきた。しかし、テクノロジ-の進歩によって逆にどんどん使われるようになった。
・この中で日本の漢字はどのようになっていくのか。未来を作る若者の漢字の現状を具体的に見ながら考えていく。
「五月雨」さみだれ さ→接頭語 みだれ→水垂れ
当用漢字で、熟語として認められている。文字感・表記感がいいのでよく使う。日本人はこの情感をまだ失ってはいない。
「紫陽花」
白居易の詩に出てくるが、何の花か特定されていないが、日本人は平安時代からアジサイと読もうと決めた。
感性を重んじる日本人らしい発想。大学生も高級感が有り教養がある感じなので使う。
漢字はイメ-ジを喚起するが、逆にイメ-ジを限定してしまう。
「若者の特徴」
・筆順が滅茶苦茶 漢字はキーボードで打つもので書くものではない。
・略字がかけないし読めない。
働 |
・女子高校生の当て字 親友→心友、神友
・意味ではなく、音感・直感で子供の名前を付ける 月光→ルナ
中国、韓国の人は字に可愛いとか、音がいいとかいう感覚はない。
・広告などには、効果を狙って漢字よりカタカナを使う。 ラクラク、カンタン、おトク・・・・
・若い人の中には、デコメだけでメ-ルを打つ人もいる。
「世界的な漢字の流れ」
・中国 簡単な字にしてしまった。
・韓国 漢字を止めて、ハングルへ。
・ベトナム 漢字を止めて、ローマ字へ。
「日本の場合」
・多極化の方向。漢字、ローマ字、絵文字などを混ぜ合わせて混乱もせずに新しい使い方を工夫している。
・多様性を好み、細分化しそこに意味付けをしていく日本人の手に掛かり、漢字は情緒やイメ-ジを表す物になっている。
(まとめ)
・ただこのバランス感が危ういところにある。
・今後何も考えずにただただ感覚だけで使っていくと、折角祖先が築き上げてきた漢字の豊かな表現力・生命力が
失われる恐れもある。