歴史再発見 漢字と日本語の文化史
早稲田大学社会科学総合学術院教授 笹原 宏之
⑦ 130813 新聞に特有の文字用法 (今日の漢字) 遵・卵・空
明治になって新聞が大展開。大きな二つの流れとなる。
大新聞 知識層向けて政治について論ずる 漢文調
小新聞 庶民層向け 娯楽・ゴシップ中心 口語体で漢字にはルビ
「新聞社の漢字制限の動き」戦前
漢字が小さいしルビがあって、紙面は黒々として読みづらい。また新聞社は日々記事を編集する時に漢字や日本語の文字をどう使うか頭を悩ましていた。活字は鉛なので重いし嵩張り高価なので、なんとか減らしたいと思っていたので漢字を制限して難しい字を使わないようにした。これもあって国の漢字製作にも積極的に働きかけた。だが大きな成果は無かった。
「戦後の動き」
・当用漢字制定
第二次大戦後、国は当用漢字表を作るが新聞各社はこれに大きな影響を与えた。昭和21年の当用漢字表の制定によって漢字制限が初めて実施された。これを見ると公用文語・放送等について説明されているがこれに新聞が入っている。
平易な文体の紙面作成で、戦後の民主主義社会実現に大きく寄与した。例えば 國→国 爲→ため
・自主的基準の作成
新聞業界はその後も様々な調査を行い、漢字を追加したり、当用漢字にあっても使用を制限するとかしていく。
(当用漢字とは)現代国語を書き表すために、日常使用する漢字の範囲を定めたもので国語審議会が答申し、政府が公布する1850字の漢字。昭和21年に発表された。現在は1981年の常用漢字がこれにかわるもの。
(常用漢字とは) 当用漢字に代わるものとして,1981年国語審議会が答申し告示された漢字。1945字の字種と音訓を選定している。
・漢字含有率 文章に漢字が含まれている割合 任意に100字を選び漢字数を数えた物。
新聞 40% (戦前50%以上) これは一般の書籍等よりは高い。少ない字数で分からせる為に。
勿論中国は100% 韓国 1%以下(30年前は50%以上)
・新聞で使われる字 多い順 易しい字が殆ど
日 一 大 年 人 十 会 二 中 市
・新聞協会が使用すると決めた字 常用漢字に準拠しないで
人込み→人混み 絆(元々は動物を繋ぐ綱) 蘇生 貫禄 箇条→個条(常用漢字)→箇条 鶏
遵法→順法(でも漢字書き取りで順法精神と書くと×) 附→付 (但し附属中学など変えないところもある)
腹→おなか 麻雀→マ-ジャン 餃子→ギョウザ 卵(生の状態) 玉子(加工した状態)
日本人は物の状態で読み方を変えていくが世界の標準は状態がどうであれ同じ。 たまご→egg 蛋
・イモは地域によって連想するものが違う
北海道 ジャガイモ 関東 サトイモ 九州 サツマイモ
漢字 新聞表記 物の歴史・広まりを勘案して決定
ジャガイモ 馬鈴薯 ジャガイモ
サトイモ 里芋 里芋
サツマイモ 薩摩芋 さつまいも
・戦後の漢字制限によって表記方法が変わり色々な変化が起きた。これにより現在も混乱中。
(混ぜ書き) 漢字と仮名をまぜて書き記すこと。本来漢字で表記する語の一部を仮名で書くこと。意味が分かりにくい。
憮然→ぶ然 招聘→招へい 語彙→語い
(書き替え) 難しい字をやめて易しい字にしてしまう。
輿論→世論 銓衡(銓は分銅、衡は図り竿 これから図り調べる意味)→選考 恰好→格好
風光明媚→風光明美 受け入れられず→風光明