私の日本語辞典「万葉歌人の植物観」
④ 2012年12月22日
講師 木下武司 帝京大学教授 東京大学薬学部卒
「すすき」 イネ科ススキ属 43首
秋の野の尾花が末の生ひ靡き心は妹に寄りにけるかも 柿本人麻呂
(秋の野に生えているおばなの穂先がなびくように、私の心はあなたの方によってしまいました)
・漢字で「芒」、国字で「薄」と記し、文学的には花穂の形が獣の尾に似るところから「尾花」と言われる。
・すすきは乾燥した土地に生え、似た「荻」は水辺。
・語源は野焼きしたあとの「煤茎 すすくき」→すすき 人は大昔から野焼きをやってきた。芒の野焼きをやっても、茎まで火が通らず、茎/根が残る。
・すすきはほおっておくと、次第に森になる。人間が野焼きをして維持してきた。よってすすき野は人が開発した証拠。
・すすきと荻の違い
ススキ オギ 「オギ」 イネ科ススキ属
株立ち 根茎が横に張って生える
乾燥したところ 水辺
オギに禾(のぎ)なしススキに禾(のぎ)あり 禾(のぎ)→イネ科の植物の花の外郭にある針のような突起。
・すすきみみずく 雑司が谷鬼子母神で売られるすすきで作った玩具のみみずく。
鬼子母神(きしもじん)
インド王舎城夜叉神の娘。千人の子を生んだが、他人の子を奪って食したので仏は彼女の最愛の末子を隠して戒めた。
以後悔い改めて仏法の護法神となり、子宝/安産/育児の神となる。 「恐れ入谷の鬼子母神」 江戸のダジャレ
「はぎ」 マメ科ハギ属の総称。 140首
秋風は涼しくなりぬ馬並めていざ野に行かな萩の花見に 作者不詳
(秋風が涼しく吹くようになった。さあ、萩の花を見に馬を連ねて出かけよう)
・萩には仲間が多いが、万葉集の殆どはヤマハギだった。 日当たりの良い林縁や野原に咲く。
・語源は、枯れたように見えていて毎年生えてくる所から「生芽」、転じてハギになった。
・秋の七草の一つ。
・萩は国字で漢字ではない。
・花の形、色彩を真似たのが「おはぎ」である。春の彼岸に作るのが「ぼたもち」(牡丹餅)、萩が咲く頃に作るのが「おはぎ」