191207 ㊱「長明歩く」(其の三)長明、伊勢に行く
長明は旅好きの人であった。前回は鎌倉への旅を話した。今回は伊勢への旅。主な資料は「伊勢記」てある。当時の東海道は現在と違って、京-草津-野地-石部川-鈴鹿-桑名であった。
長明の伊勢への旅を、歌で追ってみる。
「こはぎ原なににぞ秋はとのりける関やは風のもる名のみして」
「行き侘びぬいざ浜村に立ちよらむ朝気過ぐるは日永なりけり」
「さか塩はみそかせましてさし登るすを過ぎていく人に問はばや」
「松に吹く池の浦風渡るらし波に漂う浮島の山」
ここまでは、道中の風景描写。
「鈴鹿山伊勢路に通うみせ川の見せばや人に深き心を」
「誰にかは君と語らん玉拾うしららの浜の秋の夜の月」
「我もさぞ隠る伊勢志摩やしらら恋しき君と語らん」
「また心当てのいく朝霧こぎ慣れて波路たどらん見つの浦人」
これらの歌からは、伊勢にいる恋人への思いを熱烈に歌っている。しかし、恋人がどんな人か、結末はどうなったかは「伊勢記」には出ていない。それは「伊勢記」が逸文であるからか、長明の意図か。
「コメント」
此の恋は成就していないのではと思う。「伊勢記」以外にも全く出ていないとの講師談。