2104025④「四字熟語の表現技法」 最終回

四字熟語は漢字四文字で書かれている慣用表現である。慣用表現と何かと云うと、時代を越えて多くの人に使われてきた言葉と言う意味である。四字熟語には座右の銘的魅力とか、故事成語としての魅力とか、或いはある時代によく使われた流行語的魅力とかがあって、これらによって四字熟語は

四字熟語たらしめられているのである。

 

言葉と言うのは、意味音声を結びつけているものである。それを見て判るように、紙の上または

スクリ-ンの上に表現したのが文字である。四字熟語の意味と、四字熟語の出来上がっている文字の二つの側面がある。

「言葉の意味からの分類」

まずは言葉の意味という側面から、四字熟語の表現としてどんな工夫をしているか見てみよう。

四字熟語の多くには反復型と対比型がある。

まずは互文と言われる中国語文章独特の表現法について触れる。高校の漢文で習うもの。

中国では、伝統的によく使われる。四文字で並んでいる二文字目と三文字目が、わざと互い違いに

なっている。

具体的に四字熟語でいうと「天変地異」「日進月歩」「千客万来」「牛飲馬食」「沈思黙考」「美辞麗句」「千差万別」

「天変地異」 本来は天地変異

「日進月歩」 日月進歩

四字熟語に反復型と対比型が多いのは、漢詩に出典が多いためと、中国に陰と陽があるという考え方にもよる。

最初に戻って、「焼肉定食」は反復でも対比でもないので、四字熟語ではないのである。

何故反復と対比が重要かについて触れる。

「反復型とは」 重複表現とも言われる

反復とはどういうことか。反復型の四字熟語と言うのは、前半後半に同じような意味の繰り返しで出来ている。数多くある。同じ意味の言葉を繰り返すことで意味を強調する。

「枝葉末節」 木の葉や竹の節のように、本質でないこと 枝葉と末の節と意味を反復する 

「断崖絶壁」 前半と後半の意味が同じ

「自由奔放」 「極悪非道」 

「対比型」 前半の二文字と後半の二文字が対比的な意味になるもの

「不易流行」 俳人芭蕉の芸術概念 古いものも新しいものも同時に大事ということ

         変わる事のない不易性と、変化し続ける流行性とは本質的には同じということ

「内憂外患」 内にも外にも問題がある状態

「異口同音」 複数の人の言うことが同じ 口は異なるが、同じ言葉を発する

「同床異夢」 一緒に行動していても、考え方、目的が違うこと

「薄利多売」

「熟慮断行」

対比型の中に方向性が異なる物を組み合わせて表現の巾を広げているものがある

「紅灯緑酒」 華やかな夜の街の例え 紅と緑は補色の関係

「大同小異」 同じことで大した差はない事

「電光石火」 稲妻と火打石の火花 あっという間 素早いこと

「無味乾燥」 面白みのない 味わいもない事

 

 

今まで言葉の面から、四字熟語を見てきたが、次に文字の面から見てみよう。

「韻を踏んでいる四字熟語」 頭韻型が多い

韻を踏んでいる四字熟語がある。頭韻型と脚韻型とがある。簡単に言うと同じ漢字を使っている

もの。

頭韻型 一文字目と三文字目に同じ漢字を使う。
「百発百中」「適材適所」「自給自足」「相思相愛」「全身全霊」「一進一退」「一喜一憂」「一長一短」「徹頭徹尾」

漢字は同じではないが、音が同じ。「無我夢中」

脚韻型 二文字目と四文字目に同じ漢字を使っている・

「四苦八苦」「難行苦行」「右往左往」「以心伝心」

 

「畳語(続けて同漢字を使うもの)使う四字熟語」

「正々堂々」「唯々諾々」「明々白々」「平々凡々」「奇々怪々」「悠々自適」「呵々大笑」「粒粒辛苦」「生々流転」

「前途洋々」「意気揚々」「小心翼々」「興味津々」「余裕綽々」「虎視眈々」

「畳語ではないが似た言葉を使うもの」

「一家団欒」「春風駘蕩」

 

「まとめ」
この講座では四字熟語とは何だろう。その魅力はと話を進めてきたが、最後に言いたいのは四字熟語というのは、漫然と漢字四文字を並べてあるのではないということ。

四字熟語の殆どは、前半二文字と後半に文字とに分けられる。そしてその二文字が由緒正しい書物に語源があって、歴史上のドラマを表す故事成語になっているとか、或いは韻を踏んでいるとか、

反復になっているとか、そんな表現上の意図があって、初めて四字熟語になるのである。

単純に四文字で四字熟語になっているのではない。そしてそれが時代を越えて人々に受け入れられてきたのである。

 

「コメント」

 

まあ、面白い話であった。しかし学者がこれを取り上げていないというのは何となくわかる気がする。分け入ってもどうも学問になりにくい?
今後はこの便利な四字熟語を使う場面が大幅に減少する気がする。理解者の大幅減だ。