詩歌を楽しむ「オノマトペのすてきな関係」 明治大学教授 小野 正弘
⑩ 130906 「むらむらぱっ」の新体詩抄、「あくせく」の藤村~詩その一
オノマトペとは
「物の音や動物の鳴き声等を人間の音声で真似した擬音語、人の気持ちや物の様子などを音のイメ-ジ゜に託して 表した擬態語の総称」
・詩におけるオノマトペを見てみる。現在のような詩が確立するのは明治時代の初期の新体詩であった。
新体詩とは 西洋の詩歌の形式と精神とを採り入れて始められた詩の形で、文語の定型詩。従来の詩は漢詩を指していた。
・「新体詩抄」に起こり鴎外・藤村・晩翠等によって発展。ここで「新体詩抄」にオノマトペを見る。 1ヒラヒラヒラ ・キラキラキラ ・ムラムラバ ・グルグルグル 使われ方省略
・三連オノマトペが目立つ
・ムラムラバ 室町時代の幸若舞、江戸時代の浄瑠璃に使われている。このオノマトペは現代では馴染まないが、当時は結構使われていた。浄瑠璃「鎌倉三代記」 その意味→ムラムラと群れていたものがパッと散り揺れ動くさま。
2、土井晩翠
「天地有情」 詩集。諸葛孔明の詩を歌った「星落秋風五丈
格調高い漢文調の詩集なので、平俗なオノマトペは合わない→オノマトペなし。
3、島崎藤村 「若菜集」 第一詩集。「初恋」「潮音」等を収録。鬱屈した青春を歌った抒情詩集。
オノマトペはいくつか使われているが、多く入れると格調高い調子が崩れる。
作品にオノマトペをあまり使わないタイプ。使う場合は漢語由来オノマトペ。
・ヒラヒラ ・ボウボウ(広く遥かな様) ・マンマン(満ち足りているさま)
・カアカア(コロク→カカ→カアカア 烏の鳴き声)
4、漢語由来のオノマトペ
色々と漢語由来オノマトペを使ってきたので整理する。
漢語由来オノマトペとは、「中国語に典拠を持つ漢字の音読みによるオノマトペ」
・ヒョウヒョウ(飄々) 風に吹かれて翻るさま・世俗に拘らず、超然として
つかみどころのないさま。 陶淵明「帰去来辞」
・コンコン(昏昏) 道理に暗く暗愚な様 深く眠っている様
・ゴウゴウ(轟轟) とどろき響くさま
・ゴウゴウ(囂囂) 声のやかましい様(ゴウゴウたる批判)
・ビョウビョウ(渺渺) 果てし無く広い様、遠く遥かな様
・ビョウビョウ(眇眇) 取るに足りないさま
・アクセク(齷齪) 心が狭く小さな事に拘ること。又、休む間なくせかせかと
仕事などをすること。
・リンリン(凛凛) 寒さの身に染みる様・勇ましい様
・リンリン(玲玲)
結論 ①漢語由来というのは、漢語ではオノマトペでなかったものを漢語を
基にして日本でオノマトペにしたもの。
すでに日本語である。→オノマトペの中で漢語由来を抜き出すのは難しい。
②この理由で従来の「オノマトペ辞典」には、漢語由来は入っていない。
③講師政策の辞典には287語を入れている。