200131④「アリとともに生きる」

アリの巣に居候として生きる生き物の話である。アリの巣にアリでない生き物が生きている。好蟻性生物という。動物、植物、菌類、ウィルス・・・。一番多い昆虫類は一万種とも言われる。

アリの巣は、他の生物にとってパラダイス。常に食物があり、外敵から守ってもらえる。

アリは高度なセキュリティシステムを持っているので、同種のアリといえども、巣が違うと受け付けない。

・匂い成分での識別

・音の察知

・接触して識別

アリを飼育するときには、同じ巣のアリでなければ、同種と言えども、殺し合いとなる。

好蟻性生物は、このセキュリティシステムをかいくぐる能力を持っている。そしてアリの餌を横取りするのである。

その方法は

〇体に匂い成分を持たない。→アリに探知されない。

 古い住宅などにいるシミの種類で、アリの巣の中だけにいるアリシミである。

 シミ(衣魚・紙魚)→体形が魚に似ているので魚の字を用いる。シミ科の原始的な昆虫の総称。銀色

 の燐に覆われ、よく走る。衣服、紙類などを食害。キララムシ・・・・。

アリシミ  体に匂いの元となる炭化水素を持たず、アリの巣で餌をくすねて生きている。

〇アリと同じ匂いを発散する。→アリに偽装

アリヅカコオロギ→匂いをアリから奪い、身に着ける。身分証の偽造

ハネカクシ →アリの好む化学物質を出して偽装。幼虫の餌を取るので、アリの幼虫は育たない。→アリの巣の壊滅

 

アリの行列は、同じ巣の仲間だけに通じる「道しるべフェロモン」を、辿って行く。本来、仲間内でしか解読されないのである。好蟻性生物は、これを探知する。暗号の解読である。こうしてありに警戒されることなく、アリの巣に潜り込み、エサを横取りし場合によっては幼虫を食べてしまう。

 

以上は餌を横取りし捕食する生物であったが、共生する例を示す。

 

クロシジミの幼虫  クロオオアリとの共生

・クロシジミはクロオオアリの体表面の化学物質を真似て、仲間と信じさせる。アリから口移しで餌を

 貰い、アリの好む蜜を出す。まずは、クロオオアリがアブラムシを守っている場所に産卵。幼虫は

 蜜を出してアリを招き寄せ、巣に運んでもらい、餌を貰い成長する。羽化すると正体が見破られるの

 で、急いで巣から脱出する。無償の保育園、幼稚園である。

働き者のアリは気の毒である。

アリノタカラカイガラムシ ミツバアリの共生

 アリは蜜が大好きで、蜜を出すアブラムシやカイガラムシと深い関係を持っている。特にミツバアリ

 は、アリノタカラカイガラムシと深い関係がある。ミツバアリの巣には、必ずアリノタカラカイガラムシ

 が居て、木の根から栄養分を吸収している。

  そして、その糖分を含む排泄物がミツバアリの唯一の食糧なのである。

  ミツバアリは繁殖期にオスとメスが空中に飛び出し、交尾し、メスは地中に潜り産卵する。ここで新し

  いコロニ-の誕生である。その時に必ず、アリノタカラカイガラムシを咥えて行っていく。嫁入り道具

  である。ここで次の共生が始まるのである。

 

講師が熱望しているアリの敵がいる、フサヒゲカメムシである。

フサヒゲサシガメ カメムシの一種

アリを誘う液体を出して、アリをおびき寄せ、毒を注入して、体液を吸う。アリの吸血鬼である。

松林にいるとされるが、殆ど見つけられない。アマチュアのマニアが、この虫は何だろうとSNSに投稿したのが大話題となった。絶滅危惧種。なんとしても発見したい。

 

「コメント」

初めての話しばかり。驚きと同時に、アリをもっと観察してみようと思う。アリはかなり利用され、

また天敵もいる興味深い生き物なのだ。人間社会とそっくり、様々な人々の顔が浮かぶ。