私の日本語辞典「万葉歌人の植物観」
講師 木下武司 帝京大学教授 東京大学薬学部卒
②「アサガオ」 2012年12月8日
150首以上を取り上げてアイウエオ順にその由来、中国名とのズレを話す。
「アサガオ」 ヒルガオ科サツマイモ属 5首
朝顔は朝露負ひて咲くといえど夕影にこそ咲きまさりけれ 作者不詳
(朝顔の花は朝露に濡れて咲くと言うけれど、夕日を浴びて咲く姿こそ美しい)
萩の花尾花葛花撫子の花女郎花また藤袴朝顔の花 山上 憶良
・牽牛子(けんごし/けにごし)→朝顔の漢名、日本では朝顔の種子を乾燥した生薬。この言葉を使った歌もある。
・朝顔の語源→ 朝に花を咲かせる花の意
・熱帯アジアが原産。現在の朝顔はこの頃には伝わっていない。
・花の色は青が基本。
・でどの花かというと、ムクゲ説/キキョウ説/ヒルガオ説.キキョウ説が有力。夕方にはムクゲ/ヒルガオはしぼむ。
・キキョウは根茎を薬用とする、万葉人の関心は薬草と関係することが多い。
・万葉集の朝顔は、朝に咲く花を表しているという説もある。
・牽牛星 わし座の首星 アルタイルの漢名。彦星。七夕伝説。日本では男が女のもとに通うが、中国では女が男のもとに通う。
「ウマラ(ノイバラ)」 茨 バラ科バラ属 1首
道の辺の茨(うまら)の末に這ほ豆のからまる君を別れか行かむ 丈部鳥
(道端の茨の枝先にからみつくヤブマメの蔦のように、まとわりついて出発させまいとする君から離れていくのだろうか)
切ない情景、この人も万葉公園→矢倉澤→足柄峠を通って行ったのであろう。
・日本のノイバラは江戸時代に欧州に渡りバラの品種で親木や台木となった。
・身近にあるのはテリハノイバラ(海岸や川原に生え、葉に強い光沢)、ヤブイバラ(光沢がなく先端の葉が長い)
・初夏、芳香のある白色花を多数開き、秋赤色球形の果実。これを生薬の営実として利尿に使う。花びらは先がくぼんでハ-ト型。
・作者は天羽郡(千葉県君津)から防人として九州に行く男。妻との愛別の歌。任期は3年で、所要日数は50日。生還は期し難いものがあった。
・茨城県の県花はバラである。