191221 ㊳「長明の女性観」(其の二)さまざまな男と女
発心集に見られる男と女の物語を中心に話す。
発心集→鴨長明著。8巻。仏教説話集。
「巻5 1話」唐房法橋、発心の事
但馬守の息子で、国輔というものがいた。皇女の召使と恋仲になった。父が但馬守となって、下向するので仕方なくついて行った。任地に行っても、手紙を出すが、なかなか返事が来ない。噂では、都に病気が流行っていて大騒ぎとか。恋人とのことを心配して、都に戻ることにした。彼女は勤めを辞めていたので、探し回ることになる。
西の京に知り合いがいると聞いていたので、行ってみると昔彼女に仕えていた女童がいた。みすぼらしい家に恋人はいた。何を聞いても、向こうを向いて、ただ泣くばかりであった。こっちを向いてと言っても、激しく泣くばかり。
やっと、こちらを向かせると、女には目が無い。そして女童が説明した。「手紙を待っていたが、ちっとも来なかった。その内に病気になったので、勤めも辞めで、ここに落ち着いた。病気が重くなって、死んでしまい、野原に置かれた。しかし、しばらくして息を吹き返したが、その間に鳥に目をほじられてしまった。」と。
男はこれで終わりだと思い、比叡山に登り唐房の法橋行因という立派な僧になった。
「巻5 4話」 亡妻現身、夫の家に帰り来る事
片田舎に男がいた。妻は出産で重い病気になる。臨終の時に、髪が乱れているので、傍らの紙の切れ端で結んでやった。その内に亡くなってしまう。泣く泣く葬式をして、供養をした。妻が恋しくてもう一度逢いたいと願った。ある夜更けに、妻が寝所にやってきた。「どうやって来たのだ」「普通では出来ないことだけど、あなたの思いが深かったので、会うことが出来たのです。」生きている時のように、枕を交わした。朝になってみると、元結が落ちていた。それは、臨終の時に男が妻の髪につけたものであった。火葬で焼けてなくなったはずなのに不思議なことである。
澄慶法師という人が「これは最近の不思議な奇跡の話である」と言った。
こうした出来事は、志が深いので起きるのである。
ある人曰く「カゲロウという虫がいるが、オスとメスの契りが深い。その証拠を見ようと、オスメスを捕まえて、別々の銭に張り付けてみる。その銭は町中を廻り廻りするが、夕方になると其の二つの銭は一緒になっている。志を深くして、念ずれば必ず達せられるものである。」
「長明の男女観」 無名抄から、長明が言いたいこと
縁のある男女は深い契りで結ばれている。離別や死別があっても、そこに愛情があれば、後には通じ合えるものである。ひたすら相手のことを思えば、再会できるのである。
「コメント」
深い心があれば、通じると長明は言う。しかし自分の人生では、恋の失敗だらけの印象。うまくいったことは書いてないだけかもしれないが、「かく ありたい」ということかな。