科学と人間「太陽系外の惑星を探す」 井田 茂(東京工業大学 ELSI副所長・教授)
160805⑤「太陽系形成の古典的標準モデルの功罪」
前回は系外惑星の探索が1940年代に始まったが最初の50年は大変な苦労があった話であった。
その間理論モデルはどうであったか。この間コンピ-タ-の発達によってシミュレ-ション可能になり、急速に進展した。
恒星の周りに惑星が出来るので、恒星がどのようにして出来たかが判らないといけない。1960年~1980年に物理学に基づいて、太陽系がどうやってできたかという理論モデルが作られた。しかしこの事があとあと大きな意味を持つようになる。そのモデルが余りにも素晴らしく説明しているので、太陽系の姿が宇宙の必然なのではないかと思ってしまったのである。その後に発見された系外惑星がそうではなかったので、どう考えたらいいかが問題となった。
「太陽系の形成理論の成立」
太陽系形成理論は18世紀の哲学者カント、数学者・物理学者ラプラスの「星雲説」に始まり様々な変遷をたどったが、
標準モデルが1980年代に固まってきた。
(惑星形成の出発点 原始惑星系円盤)
恒星が出来るときに副産物として原始惑星系円盤と呼ばれるものが形成された。この円盤は、O・H・Heを主成分とした
ガスの中に重元素を主成分とした塵が数%混じったものと推定される。円盤の中で微量成分の個体部分が凝集して
地球型惑星が出来たとする。この理論を基礎にして、恒星の形成から地球型惑星・巨大ガス惑星(木星・土星)の形成に至るまでのシナリオが提示された。これが標準モデルと呼ばれる。
円盤中の微量の個体成分が集まって地球型の岩石惑星を作り、又木星・土星などの巨大ガス惑星が出来る元となった
岩石・氷の芯を作った。
(微惑星の形成)
重元素を主成分とする塵は円盤ガスと一緒に回転しているが、太陽の重力と遠心力の影響を受けて、徐々に円盤の
中心部に集まってくる。これが凝縮して1~10Kmの微惑星と呼ばれるものになる。これが太陽系惑星のコアを作った。
(微惑星から原始惑星へ)
微惑星はお互いの重力で軌道を乱しながら、衝突して合体し原始惑星へと成長していく。当時日本のスパコンは世界一で又アメリカと違い、軍事利用が無かったので思い切り学術研究に利用され、目覚ましい結果を出し欧米から賞賛された。
形成理論の一部
原始惑星
試算では太陽の重さの1/100の個体にガスのかかった原始衛星が20個位形成される。(地球の重さの1/10程度)
その衝突
より大きな惑星の誕生 飛び散ったかけらから月の誕生
木星・土星は太陽から遠いので氷も凝縮し重力も増す。ここでは太陽の引力も弱いので、相対的にこれら惑星利重力が強まり周囲のガスを呼び込む。
月は重力が弱いから大気を留めておくことが出来ず、宇宙空間に逃げたので月には大気が無い。
海王星・天王星は太陽からの距離が長く公転周期も長くゆっくり。出来上がるに時間が掛かり、その時には宇宙空間にはガスと大気はなかった。それで裸の氷の惑星となった。
一般的に太陽に近い方に岩石を主とした地球型惑星、外には巨大な金星・土星のガス惑星、遠い方にガスも岩石、大気もない裸の惑星。これが見事に説明できた。
1990年頃にはこれで太陽系形成は説明できたという雰囲気であった。時まさに系外惑星発見ブ-ムである。
「コメント」
計算式やアプリがあるわけではないので自分で作らねばならない。スパコンの遣い方からして大変。ここのところを突破しなければその折角の理論を証明できない。当時コンピュ-タを使えない老科学者はどうしたの?
考えるのはアホなことばかり。