科学と人間「太陽系外の惑星を探す」 井田 茂(東京工業大学 ELSI副所長・教授)
160708①「地球外生命の議論と共にあった天文学」
「地球外惑星探索の現状」
・昔から地球以外の星に宇宙人はいるのか、生物はいるのかというのは話題になり疑問であった。それに対して最近
研究が進んで、まずそういう生物がいてもいいような環境の惑星が続々と見つかっている。この太陽系外の惑星系つまり太陽ではない別の恒星の惑星、そういうのを系外惑星と言うが、そういう場所を探そうというのが天文学者の大きな野望である。19世紀からそういう系外惑星を探そうという観測が始まったが失敗の連続。1955年に初めて、該当する系外
惑星が発見されて、その後は関を切ったようにみつかり2010年には500個、現在では5千~6千ともいわれる。
・最初の頃は木星・土星みたいな巨大なガス惑星が見つけやすいので発見されていたが、最近では地球と同じような
大きさの惑星が次々と見つかっている。このような惑星は、銀河系には満ち溢れている。銀河系の恒星にはこのような
惑星が付属していることも明らかになってきた。この中には地球と同じように表面に海を持つであろうものも沢山ある
だろうと推測されている。→当然生命の存在への期待も膨らんできている。
・夢物語や根拠のない空想を話していても科学にはならないので、生命体が存在することを確認する方法の議論が
行われている。
・一方で太陽系の中でも火星は昔から生命体があるのではないかと言われてきた。又木星の衛星エウロパ、土星の
衛星のエントラドゥス、そういう所にも生命体がいるのではないかとの意見も出てきた。
「天文学の歴史」
・惑星→惑う星
日本語では星と言うと恒星も惑星も区別しない。 恒星 fixed star 惑星 planet
恒星は動かないが、惑星は空を旅しているように見える。あっちへ行ったりこっちへ行ったりするので、惑う星→惑星
と名付けられた。
天文学はまずこの惑星からスタ-トして何故、そういう動きをするのか調べようとなった。
・地動説と天動説
ガリレオはこの惑星の動きを説明するのに地動説の方が説明できると考えた。つまり太陽の周りを、地球・火星・
木星も廻っている。そうすると、地球から見たそれぞれの位置は刻々と変化するのである、故に不思議な動きをする
のではないかと考えた。こうして地動説を主張するようになった。しかしはっきりとした裏づけが取れていた訳では
なかった。
・ケプラ-の法則
ガリレオの主張した地動説をはっきりさせたのは、ケプラ-の惑星の運動に関する法則である。
「惑星は、太陽を一つの焦点とする楕円軌道上を動く。」
これで惑星の動きは説明できた。
・太陽系に生命体はいるか→火星にいる可能性
中世から天文学者の間では地球と同じように他の天体にも生命体がいるのではとの議論が近代まで続いてきた。
19世紀20世紀初期科学の進歩と望遠鏡の改良で、天体観測が進化。その結果、太陽・月には生命は住めない
ことは分かる。其れには分光分析が役に立った。この結果可能性が残ったのは火星。
・火星に生命体の可能性の議論→火星人存在と言う大スキャンダル→生命体議論の封印
火星には空気・水がある。温度も低めだけれども生命体がいるのではとの議論になった。そこで天文学者の観測は
火星に集中していく。そこで出てきたのが火星の運河説。それを言ったのが当時の一流の天文学者達。
そしてそれは捏造を含む大スキャンダルであった。これによって天文学者は恐れて地球外生命の議論を封印して
しまう。これが20世紀の終りまで続く。この後遺症として、火星人と言う俗説が世間で広まってしまった。
・地球外生命議論の再開
1955年に太陽系以外の恒星の周りを回っている惑星が次々と発見されて、地球のような惑星が銀河系には
沢山あることが確実になってきた。これを契機として、地球外生命の話が活発になってきた。
100年間議論を封印している間に、生命科学、地球生物学、地質学、観測機器などの進歩は著しく、この議論を
大きく前に進めた。
・生命体存在の可能性
NASA(アメリカ航空宇宙局)、ESA(欧州宇宙機関)との土星観測衛星が、土星の衛星エントラドゥスから水蒸気と
有機物を観測した。これは地底に海があることを示し、有機体の存在と共に生命体がいるので生命体の可能性を
示唆している。現在はこういう状況である。
「コメント」
前の「46億年」に比較して分かり易す過ぎ。これなら猿にでも分かる。地動説、とケプラ-との関係は初めて
知った。火星人騒動では、天文学者も相当応えたのだ。でもそれが100年続くとは。
「46億年」では、銀河系宇宙に生命体の存在する確率は1/1千億、宇宙では更にその1/1千億と言っていた。
さてこの話がどうなっていくか楽しみ。