科学と人間①「地球と生命の46億年史」 丸山 茂徳(東京工業大学 地球生命研究所特命教授)
160610⑩文明の歴史と人類の遠未来
46億年前に誕生した後、生命は長い時間かけて進化した。中・新生代に哺乳類が誕生し6500万年前に霊長類が誕生した。そして700万年前に人類誕生。人類の歴史を解説する。
「人類の誕生」
人類はアフリカの大地溝帯で誕生した。そこは古い大陸が割れ、特異な火山が存在し、所謂原爆マグマ(ハイア-ルマグマ)が噴出する場所である。ここで前回述べた茎進化の結果として人類の誕生となった。この大地溝帯の中に人類学の
聖地といわれるオルドバイ渓谷という場所があり、人類の化石が折り重なって発見された。ここは原爆マグマの爆発により、局所絶滅と茎進化によって新種の人類が誕生したのである。
「脳の進化」
脳容量の進化を化石から研究すると、180万年前・70~80万年前・20万年前の三回にわたって急激に容量が増加している。500ccから1600ccに大幅に増加している。この時期は原爆マグマ(ハイア-ルマグマ)の噴出時期と合致して
いる。従って人類の脳の進化は、茎進化であり、アフリカ大地溝帯(リフト)で起きる特有の進化であることが示唆される。
「文明の歴史と五回の革命」
人類は700万年前にチンパンジ-と別れて誕生、猿人(アウストラロピテクス・ホモハビリス)→原人(ホモエレクトゥス)→
旧人(ネヤンデルタ-ル人)→新人(ホモサピエンス)と進化していく。そして1万年前ころから文明の進化が始まる。
・農業牧畜革命 1万年前
狩猟採集生活をしていた人類は、農業と牧畜を発明して、飢えを克服していった。→人口増加
・都市革命 5千年前
農業生産性が上ると、職業の分化と物々交換などにより都市が発生する。そして都市間の抗争が始まる。
・宗教革命 3千年前
王制による抗争を回避するために宗教革命が起き、宗教国家が設立される。
・産業革命 300年前
ニュ-トンの古典力学の著書「プリンキピア」をきっかけにして英国中心に産業革命が始まる。科学に基づく理論が
構築され、技術が社会に革命的な変化をもたらした。
・情報革命 現在
20世紀の後半になって科学と技術の進展は大きな節目を迎える。コンピ-タ-による情報革命である。インタ-ネット
を生み出し、世界が一瞬で繋がれる時代となった。
「人類の未来」
様々な喫緊の課題が横たわっている。これは過去にはなかったことばかりである。
<人口増加>最大の問題→食糧問題
1万年前 100万人
1900年 17億人
現在 70億人
2020年 100億人(ローマクラブの予測)
ローマクラブ 世界の科学者・経済学者・経済界などの識者が結成した民間組織。環境・人口などの面から将来の
危機に警告を発している。1968年初会合。
2100年 4000万人 日本は大幅減少
人口増の国々(インド、中国、バングラディシュ・・・)も22世紀には減少に転ずる。これは先進国の例からも予想される。
食糧増産対策
・遺伝子組み換え技術の開発による穀物の収量増加
・穀物の50%は昆虫に食べられているので、その防除
・農作物生育期間の短縮技術の開発
・昆虫の食料化
<エネルギ-問題>
シェ-ルガス採掘技術の開発で化石燃料の寿命が200年伸びたが、有限には変わりはない。クリ-ンエネルギ-開発は引き続き求められる。
<宇宙変動の危険>
ス-パ-フレア(太陽表面の大爆発)による地球への影響。黒点活動が現在は少なく、これは近未来に爆発的なフレアが発生して、電子嵐が地球を襲う危険が増加していることを意味する。
<人工生命体の誕生>
科学の最前線では生命の起源を理解し、人工生命学のジャンルを加速度的に発展させている。限りなく人間に近いロボットが生産されるようになる。此れと共に、最終的にはロボット自身が自己複製可能な人工生命体を作る時代が間違いなく来る。人工生命体の誕生は、生命の歴史における人類の役割の終了を意味し、人工生命体が主役の時代が展開
するであろう。
「コメント」
ロボットが主役の時代が来るのか。そうなると人間が持っている豊かな感性、個性、経験による智慧、宗教心、愛国心、男女の愛などはどうなるのか。これらを持ったアンドロイドが誕生するというのか。
いずれにせよ、以上の未来の問題は2020年から2050までが山である。この間に将来の道筋を付けねばならない。
しかしこの世紀ほど、過去の人類の歴史の中で変動の激しい時代はないのではないか。この時代に生きて、幸せなのか、はたまた。