科学と人間①植物の不思議なパワ- 甲南大学教授 田中修
150522⑧植物に秘められた力
「挿し木」 植物の無性生殖法の一つ。果樹・花木などの枝を切り取り、地中に挿入し、不定根を発生させて新株を作る事。
・キンモクセイ モクセイ科 中国原産 秋、橙黄色の芳香の強い小花を多数開く。九里香とも言う・・・九里先まで薫るから。
花は多数付くが結実しない。日本には雄株が無いから。沈丁花も同じ(七里香) これを増やすのは挿し木。
・挿し木の起源 イチジク
人類は食物として、そのまま食べられるものからスタ-ト。2006年、エジプトでイチジクの実を発見、これが最古の果樹の一つと
されている。又栽培植物の最古とも言われる。その理由は、実に種子が無かったから。種子が無いので栽培されねば現在まで生き
残っていないから。栽培方法は、挿し木によったものと推定されている。
・挿し木の例 一年で一本から二億本にまで増やせる。植物はものすごい力を持っている。
マタタビ 10cm 葉 6枚→葉に枝を付けて1cmを切り取る。5本の苗木は、1ヶ月で次の挿し木→1年後には2.4億本となる。
「接ぎ木」 植物で、ある個体の芽や枝を切り取って、根を持った他の個体の茎や枝などに挟み活着させること。一般に果樹や野菜
の栽培で行われる繁殖法の一つ。下の根を張っている方を台木という。この方法の利用範囲はとても広い。
・野菜苗の60%以上は接ぎ木苗である。
・接ぎ木の目的 台木には病虫害作に耐えるものを使い、そのものの弱点を補う。連作障害の予防。
ナス・・赤ナス ゴ-ヤ・・カボチャ スイカ・・カボチャ キュウリ・・カボチャ ミカン・・カラタチ
キュウリは熟すると、白い粉状のものが付着するが、消費者に嫌われるので、これの出ない台木を使う。白い粉はブル-ムと言い、
キュウリ自身が、病気予防・鮮度保持のために作り出すもので無害なのに。
・ソメイヨシノ エドヒガンとオオシマザクラの交配で生まれたもの。日本国中のソメイヨシノは接ぎ木で増えたのでクロ-ンである。
エドヒガン・・・花が葉より先に出て咲く。沢山の花 オオシマザクラ…桜色の大きな花
この両方の特徴を持っている。気象庁の開花予想は、クロ-ンなので同じ地方ならば、一斉に咲くので開花予想が出来る。
自分の花粉では受粉しないので、接ぎ木で増やすしかない。
「矮性化」 品種改良によって、小さくすること。特に高さを低くすることを言う。
・イネ・ムギは背丈が小さいほうが栽培は楽。風に強い、収穫が容易、余分な肥料が不要
・イネは年々背丈が低くなってきている。
明治時代 120cm→昭和40年 100cm→現在 85cm
他の品種改良も相まって、収量も1945年の2倍となっている。
・現在も、更に低く、収量は多く、食味はさらにいいものが研究されている。
・戦後 アメリカの調査団が日本の小麦「農林10号」を、持ち帰り更に改良して、世界に普及させた。これは「緑の革命」と言われ、
インド・パキスタンの食糧危機を救った。これは、背が低く、収量が多く、病虫害に強い品種。
(Norin 10go)と呼ばれている。
「コメント」
・それで今のきゅうりは白い粉が付いてないのか。これは余計なことで、何の意味もないと思うが。
・農林~号と言うと、あのまずかったサツマイモを思い出すのは歳のせい。全国にある農林試験場も頑張っているのだな