カルチャ-ラジオカラスなぜなくの~カラス学入門」東京大学特任助教授 松原 始
④140223 子育てカラスにご用心 2月から東京ではカラスが子育て、警戒心が高まる
今日はカラスが人間と関わる部分について話す。農業被害のことは省いて街中でのことについて。
(生態からの考察)
「カラスの襲撃」 人を攻撃するのは営巣・子育てと深く関わっている。
カラスの繁殖について
・普通カラスは1回/年繁殖する。
・産卵時期 ハシブト 3月中旬~4月、ハシボソ 2月末~3月
・抱卵 3週間 抱くのはメス この時期には攻撃的ではない。
・誕生から生育 1ヶ月
この間、鳥全般だが特にカラスはヒナ中心の生活。また巣立ちの頃がヒナにとって一番危険な時期ヒナ周辺の異物は全て排除しようとする。この辺から攻撃的になる。
動物がカラス(他の個体)に近づいたり、視線を向ける時は次のケ-ス
・相手をライバル視している時 オス同士・メス同士
・性的興味がある時 繁殖相手
・捕食しようと見ている時 捕食者 猫、キツネ
カラスは自分なり、ヒナを見たり近づいてくる人間は、自分たちを捕食しようとしているものと認識する。これに対して威嚇したり、これが効果ないと判断すると攻撃をする。何の前触れもなく攻撃するということはない。カラスは手順を踏む。段々威嚇的になって攻撃をするのは最後となる。カラスが突然襲ってきたと言われることがあるがそういうことはない。カラスが威嚇しているのに人間が気づかないだけである。
3、威嚇の段階 対象が人の場合を示す。
①声の変化 鳴き声には意味がある。
・カ カ カ 間隔を開けてのんびり一声づつ鳴くのは、自分の存在を仲間に知らせている時。
・激しくなり繰り返しが早くなる。→他のカラスへの威嚇 縄張りを主張 この時から、
威嚇先を向いて鳴く。
・鳴き声の威嚇が効かないと近づいてくる。
・鳴き声がしゃがれてくる。(ガラガラ声)→かなり怒っている。
②人間の上の木の枝を折ったり、葉をちぎる。→かなりフラストレ-ションが溜まってきた状態。
この威嚇が効果ないときに実力行使して攻撃。
4、実力行使→頭を蹴っ飛ばす
①後ろから頭の上を飛越して威嚇
②これでも立ち去らないと、爪で頭を蹴っ飛ばしていく。
・この状態を襲われたというが怪我の状態は軽く、浅い擦過傷程度。治療することはない程度。
・クチバシで攻撃することはない。
・これが最大の攻撃である。
5、ヒナが地面に落ちている時にどうするのか。
・親鳥はヒナが地面に落ちても、鳴き声を上げている限り、餌を運んでくる。但し人間が違う場所に運んだりすると行方不明→いないもの→死んだ としてしまう。
・よってそのままにしておくべし。但し道路など自動車などに轢かれる恐れがあれば木の枝の上、茂み等に緊急避難させる程度。
(ゴミ漁りの問題)
この問題はカラスが自然界のスカベンジャ-(掃除屋)というところから来ている。食べ残りを食べるのは当然という生態なのである。都会のカラスの餌のほとんどはゴミである。カラスの生態を見ながらカラスのゴミ漁りの対策を考えてみよう。
・鳥全般に言えるが、嗅覚は鈍く採餌には役に立たない。目で識別をしている。鳥は紫外線も使って探している。テストで同色のニセ食品と本物を並べたらつついて見ないと分からなかった。
・鳥は一種のカラ-フィルタ--を使って見ているので、カラ-ゴミ袋は色がべったり見えて中身が
見えないはず。よってつついて中を見ないと中身が分からない。カラスにとっては手間が掛かる
ようになる。黄色のゴミ袋は意味がある。
・カラス避けとして、死んだカラスをぶら下げたり、キラキラ光る物を下げたりするが、効果なし。
一時の嫌がらせにはなるが慣れたら、全く気にしない。
・結局は採餌効率を下げることしかない。カラスは短時間に危険なく、容易に餌を取ることを
狙っ て いる。よって カラスにとって手間が掛かり、危険が多くなるようなゴミの出し方・置き方
にして行くしかない。
「究極のゴミ対策」 ゴミに触らせないようにする。
1、閉鎖ゴミ置き場とする。
2、壁を作る ・飛び立ち難くする設計とする ・蓋をする
3、ゴミ出し時間の工夫
ごみが荒らされるのは、出してから収集車が来るまで。この時間を短時間にする。
札幌などではこの時間を0としている。また、カラスが活動しない時間帯にゴミ収集
する。夜明け前、夜。
4、収集までの間、カラスにとって最大の天敵・人間が見張っている。
「カラスの駆除」
農業保護のために、有害獣駆除があるが効果をあげた例はない。東京都では金をかけて1万羽/年駆除しているが減っていない。その地区の個体数は餌を主とする環境収容力で決まってしまう。都市部では餌となるごみが無尽蔵にあるので、減るわけはない。駆除しても、その分繁殖してすぐ元に戻ってしまう。よってゴミの減量・採餌しにくくするしかない。
カラスは我々にとって一番身近な野生動物である。自然との共生・環境との調和とか色々と人はいうが、そのためにはまずカラスと共存を図るべきではないか。環境が大事だ、地球を守れという人が、人間が出したゴミを漁るカラスに文句をいうのは筋が通らない。これはゴミの減量・ゴミの出し方・置き場の工夫で処理すべきこと。
この講座で嫌われているカラスに少しでも親しみを持ってもらえれば本望。